『新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか ~失敗しないための採用・面接・育成~(樋口弘和著、光文社新書・2009年1月)』を読んだ。採用において、いかに面接が大事かということが、この本の主旨の大部分を占める。中小企業の中は、採用にあたって、大手企業には勝てないよ、という話をたまにするが、実際には、ベンチャー企業・中小企業に行く学生が多いのも事実である。大企業は、初めはどの企業もベンチャーから始まる。リクルートもマイクロソフトもグーグルも。10年で大企業になる場合もある。採用に真剣に向き合ってきた結果であろう(逆に採用に失敗すれば、会社に大ダメージを与える)。
以下、本から一部引用した。
●一流人材を獲得するには、あえて口説かない
当社では、セミナーや会社説明会の時点で、「モノが違う」一流人材に目をつけます。もちろん会社の人材レベルを大きく超える応募者は、育てることができないので、対象外です。イメージでいくと採用ターゲット人材の150%ぐらいでしょうか。こういう人材とめぐり合うと、彼/彼女の適性やタイプを想定して、最初の面接から面接官としてエース級を投入します。
ただし、口説いてはいけません。こういうレベルには淡々と接していきます。自社の課題も隠しません。むしろ面接官のレベルの高さと品格の高さをアピールするのです。ここが重要です。「この会社規模のわりには、面接官のレベルが他社と違うなあ、どういう人材がいるのだろう」という興味と関心を持たせることが重要です。
実際の面接は、ゆったりとした時間で、自社の一流の人材とゆっくり会わせ、あえて口説きもしません。先輩として「俺の人生観は(社会で何が大事か)」とか、「こういうとこだよ、会社とは(会社の良いところ、悪いところ、就職先を選ぶ時に何が大事か)」という話だけをさせるのです。それが一番の口説きになるからです。そういう意味では、一般とは別のプロセスでの採用方法になります。
こうした人材を獲得するためなら、相手にも時間を与えましょう。ゆったり相手のペースで進める。無理せず、学生のためを思って、話をします。おそらく、3回も会えば、十分なはずです。直感力があって決断力がある一流人材は、判断するでしょう。
●一流人材には特別な方法が必要
以前、HPの人事にいたときのことです。日本ではまだ知名度が低く、R&D部門の採用で悩んでました。そこで思い切って、アメリカツアーを組んだのです。限定10名。インターンシップのように少し職場で雰囲気を味わってもらって、夜は食事に行ったりもしました。
そのことが、あっという間に学生の間で話題になりました。
こうした地道な活動を通じ、少しずつブランドが浸透し、10人参加すれば1人ぐらい入社してくれるようになりました。当時は、全職種で年間200人ぐらい採用していましたが、本物の一流人材が10人も入社してくれればいいのです。開発エンジニアという職種は、やはりピカイチが来てくれなければ困るのです。
●面接
当社では、当然ながら、充分にトレーニングをされた面接官が面接をおこないます。小さな無名の会社であるにもかかわらず、優秀な学生がビックリするようです。「ここで働いている人のレベルが違う!」と。こうして動機付けされた学生が、最終面接の場で私にそういう話をしてくれるのです。
一般的な企業の面接力が低い現状において、面接官に対するトレーニングをきちんとすることが、何よりの採用力アップにつながるのです。
●「学生時代に一番がんばったこと」を聞くのは時間のムダ
当社でも、最初のステージの面接ではこの手法を使いますが、「決め手」となる面接では使いません。なぜならば、あまりに準備されている話で、その人の本質がまるで見えないことが多いからです。
ですから私は、日常生活になるべく近い話題を選ぶようにしています。たとえば、ゼミの話であれば、毎回の講義への取り組みを聞きます。開始時間のどれくらい前にゼミ室に行くのか?どんな準備をするのか、不明点をどのように調べ、どうまとめていくのか?どこまで議論するのか?議論が熱くなった場合のあなたの役割は何か?自然にそうなるかどうか?こうした質問から、その人の基本的な資質を見抜いていきます。就職活動や長期のアルバイトでも同様です。
⇒「何時頃起きてきたの?」「ご飯は?」「ちゃんと授業出てたの?」といった質問で、時間の使い方、守り方、他人との協働の仕方、配慮の方法、感謝の気持ちなど、学生の本質が見えます。「なんでそんなにマジメなの?何が楽しいの?」といった質問をして、学生が用意してきた得意の話はさせないようにする。
⇒入社動機や自己PRは評価の対象ではなく、せいぜい最初の自己紹介の一つとして軽く聞き流すべき。直接聞くのではなく、雑談の中から、相手がこれまでやってきた事実の中から、面接官の側が推察しなくてはならない。