10.31.2010

★就活革命(NHK出版 生活人新書)

「就活革命(辻太一朗著 NHK出版生活人新書・2010年6月)」は、数ある就職関連の本のなかでかなりお勧めできる本。


《以下、本文より気になった箇所の引用》

将来を決める就職活動でするべきことはふたつ
1.自分は本来どんな力があり、何をしたいのか、何をしなければいけないかを考える「自分探し」
2.したいことを実現するために、必要な力をつける「自分作り」
(35P)

「自分探し」より「自分作り」
浦和レッズのクラブハウスを訪ねて、
「自分はこんなにサッカーが好きなんです」
「頑張る気持ちは誰にも負けません」
といくらアピールしても、契約はしてもらえません。
誰よりも頑張れるのなら、頑張って練習して、うまくなってから来てください、と言われるだけです。
「サッカーが好きな自分」を自己分析している時間があったら、練習することです。プロになれるだけの技量を身につけることです。
就職も同じです。いくら「この会社に入りたい。自分はこういう仕事が好きで、またこの仕事は向いていると思います」と言っても、その仕事をするだけの能力がなければ企業は採用してくれません。
「自分探し」だけではダメなのです。「自分探し」は「自分作り」と対になって初めて意味を持つのですし、「自分作り」がなければ本来の就職活動とはいえません。
ところが、この「自分作り」を、現在の就活は置き去りにしています。「自分探し」に偏重し、もっと重要な「自分作り」がされていない。ここに日本の就活が抱える最大の問題があります。
(41-42P)

手作りの就職サポート
サポートセンターで実際に学生をサポートするのは、多くの場合、大学職員です。しかし大学職員のほとんどは一般企業に勤務した経験がなく、企業がどんな仕事をしていて、日々どんな競争にさらされているかをご存じない。ましてや、人事担当として、日々どんな競争にさらされているかをご存じない。ましてや、人事担当として勤務した方は、ほとんどおられないのではないでしょうか。つまり、企業がどんな人材を欲しがっているのかを、よく分かっておられない。だから彼らが学生にアドバイスをするときも、この企業に入りたいならこういう能力をつけなければいけないという、根本的な話がなかなかできないという問題があります。
(47P)

企業が大学での成績を気にしないわけ
日本の学生が勉強をしないのは、大学での成績が就職に影響しないからだということがよくわかります。ではなぜ、日本の企業は採用選考において大学での成績を考慮しないのでしょうか。
その理由のひとつに、日本では大学での勉強は仕事では役に立たないと考えられていることがあります。これはとくに大手企業の人事担当役員や人事部長あたりに多いのですが、大学での勉強イコール知識の習得だと思っているのです。
が、この認識は間違っているといわざるを得ません。大学で学ぶのは、知識だけではないのです。本来、大学で学ぶのは知識に加えて、それらの知識・情報を結びつけて推論を組み立てたり、それを整理してわかりやすく発表するといった「知的トレーニング」なのです。この知的トレーニングは仕事と関係ないどころか、直結するといっていいものです。

日本全体で弱い学生を作っている
<日本における就活の現状>
・発端は優秀な人材を確保したい企業の思惑
大学に対する企業からの評価の低さが、就活の早期化を許す
・就活に追われた学生が授業に出ない、勉強をしない
過度な自己分析によって、内向的で心の弱い学生が増える
大学の活力が低下する
・就活の早期化・長期化による企業自身の負担増
・弱い学生が社会に出てきたことによる、日本企業ひいては日本の国際競争力低下
競争力の弱まった企業が、生き残りのために優秀な人材を求める
・その結果、就活の早期化・長期化に拍車がかかる
(114P)

目指すべき「正のスパイラル」
企業:採用活動の適正化
大学の成績を選考に活用

学生:就活の短期化
成績を上げることに力を入れる

大学:教育の充実
大学に活力が出る

学生は鍛えられる

より優秀な人材の確保
(167P)

「知識+応用力」「能力+努力」の評価を
日本の大学の授業を外国の大学と比較して気になるのは、内容が知識に偏重していることです。偏重しているというと外国より多くの知識を教えているように聞こえますが、どうもそうとも思えない。むしろ外国に比べて応用が少ないというべきなのでしょう。
応用する力はビジネスをするう上でたいへん重要なものです。これが身につく授業を、というのが第一の希望です。学生に、日常的に考えさせることをしていただきたいのです。
たとえばすでに書いたように、論文を書かせるのは、ひじょうに有効な方法です。ひとつの課題にじっくり取り組むことによって、持久的な応用力を養うことができます。
それに対して、ディスカッションでは「いまどう考えるか」という瞬間的な応用力、瞬発的な応用力を身につけることができます。
論文やディスカッションを積極的に授業の中に採り入れて、ただ記憶すればいいというのではない、学生が主体的に考える環境を作っていただきたいのです。
もうひとつは、成績の評価方法です。期末にペーパーテストを行う、しかも記憶中心の問題で成績を評価するやり方では、学生の能力や資質を見ることができません。企業が大学の成績を見ないのは、大学の成績を重視していないからです。
まず、評価のタイミングを期末の一度きりでなく、継続的なものにする。中間に何度か行う小テストのようなものも評価の対象にして、理解を進める過程も評価に含めるのです。
中間評価もペーパーテストより、論文やディスカッションの方が望ましい。「考える力」の成長も見ることができるからです。
こうした評価方法になることで、大学での成績に「やらなければならないことはやる」という心の力や主体性、責任感などが反映されることになります。そうした評価は企業にとって必ず参考になるはずなのです。
そして、もうひとつがGPAの導入です。単位数だけ揃えれば進級・卒業ができる現在のやり方に、GPAを加えること。GPAではその学生の成績が明確な数字として表れますから、進級や卒業の目安としてひじょうにわかりやすい。また成績の比較という点でも一目瞭然になります。何より単位を落とした科目も成績評価の対象になりますから、学生にとっては気の抜ける科目がなくなるわけです。
(169‐171P)