6.11.2013

10年後に食える仕事食えない仕事(東洋経済新報社)

「10年後に食える仕事食えない仕事(渡邉正裕著、東洋経済新報社 2012年2月)」は、各職種がグローバル化がすすむ日本において、競争が厳しくなるのか、そうでないのかを示す指標を示してくれる。競争が厳しくないから、楽だからという理由で、仕事選びすることは、その人の充実感や幸せとは関係のないことだ。だが、どういう位置づけに自分の選ぶ仕事があるかを、事前に知ることによって、社会人として必要な覚悟を強固にすることができるかもしれない。


≪本の主旨≫
グローバル化がいくら進もうが、日本人の仕事として日本に残る仕事は、必ず残り続ける。逆に、グローバル化で減る仕事、賃金相場が限界まで下がり続ける仕事、丸ごとなくなる仕事がたくさん出てくるのも事実だ。だから、自分がどの領域で稼ぐのかを考え、仕事を選び、能力を高めていかねばならない。本書はその航路図となるものを目指して執筆した。(1‐2p)


≪グローバル化時代の職業マップ≫
◆1:重力の世界 <日本人メリット:少、技能集約的>
・グローバルの最低給与水準に収斂されていく
・平均賃金が日本の20分の1のインド人、中国人との勝負
・低付加価値なブルーカラー職種が多い

◆2:無国籍ジャングル <日本人メリット:少、知識集約的>
・世界70億人と仁義なき戦い
・超成果主義の世界
・勝ち残れれば青天井
・才能も運も必要
・顧客と直接接点のない職種が多い

◆3:ジャパンプレミアム <日本人メリット:大、技能集約的>
・日本人ならではの高いサービスマインド、職人気質、チームワーカースピリットを活かす
・「同じ日本人」という信頼感を活用した対面のサービス
・営業マンや旅館の女将など

◆4:グローカル <日本人メリット:大、知識集約的>
・日本人の強みを活かしつつ、高付加価値スキルで勝負
・日本市場向けの高度専門職
・高度な日本語と日本での人的ネットワークを活かす
・「士」業など


≪各職業マップの代表的職業≫
◆1:重力の世界
・店舗販売スタッフ
・旅行会社営業
・人材紹介(データベース系)
・テレアポ営業
・低単価広告枠営業
・中小企業向け事務機器営業・介護福祉士
・コールセンタースタッフ
・インフラ系エンジニア
・プログラマー

◆2:無国籍ジャングル
・メーカー基礎研究者
・会計士
・ディーラー/トレーダー
・財務/経理
・デザイナー
・プロスポーツ選手

◆3:ジャパンプレミアム
・公務員
・住宅営業
・銀行・証券・信金の法人営業
・証券会社の個人営業
・企業向け保険/年金営業
・メガバンク地域営業
・自動車ディーラー
・保険セールス
・海外の対邦人営業
・美容師
・保育士
・人材紹介(ヘッドハンター系)

◆4:グローカル
・記者/編集者
・システムエンジニア
・税理士
・メーカー開発者(高付加価値品)
・医師
・人事のプロ
・コンサルタント
・通訳/翻訳家
・薬剤師/MR
・グローバル営業
・コンサル/IT系ソリューション営業



「重力の世界」の住人になってしまうと、生活保護水準に張り付くことを覚悟しなければならない。「重力の世界」の職業は、日本人メリットがほとんどなく、基本的に正社員として雇う必要もない職業ばかりなので、会社の看板に守られることもない。(154‐155p)

日本国内の雇用の現状はどうなっているのか。「重力の世界」が72.5%(4223万8300人)を占め、圧倒的多数を占めた。なかでも一番人数が多いのは「販売店員」(356万600人)であった。グローバル化が進む一方で何も手を打たなければ、7割の人は職を失って外国人にとって代わられるか、今の日本の最低賃金よりもさらに低い「グローバルの最低賃金」に張り付いて海外に出稼ぎに行くしかなくなる。(194‐197p)