3.05.2011

なぜ国家は衰亡するのか(PHP新書)

盛者必衰は理である、と我々日本人は習った。では、「なぜ国家は衰亡するのか」。日本の今後に非常に不安をもつ私はある一冊を手に取った。

「なぜ国家は衰亡するのか(中西輝政著、PHP新書)」で、著者は長く続いた国家の事例の一つといして、ビザンチン帝国の例をだしている。

「ビザンチンの例がわれわれに示してくれるのは、自分たちの伝統、価値観、制度、ある場合には神話も含めて、その「文明の核心」となる部分はどんな危機においても、また繁栄のなかでも、絶対に放棄しないということであろう。と同時に、外の大きな流れには積極的に対応し、本質的に可能なものや技術的なものについてはむしろ積極的に取り込んでいかなければならないということである(128~129P)」つまり、この逆が衰亡への道ということである。宗教(キリスト教)に飲み込まれ滅亡した西ローマ帝国と、宗教(キリスト教)とうまく取り入れ、1000年続いたビザンチン帝国の違いは非常に興味深い。

また、大英帝国の例も興味深かった。
日本が日露戦争を戦っていたとき、イギリスでは「われわれは衰退しているのではないか」という問題意識がはじめて多くの人々の心を捉えていた。そこでは各種の問題が提起されただけではなく、それらに対するいくつもの改革案が提示され、それを実行に移そうとさえしていた。しかし、結論からいえっば、それらの改革案は実現することがなかった。(68P)
その当時に出版された本で、古代ローマとの対比において衰退の兆候と思われるいくつかの指標をあげている。第一にあげている衰退の共通した特徴は、大都市での生活が非常に快適で刺激に富んだものになり、さらにますます多くの若者がその大都市から離れたがらなくなっているということである。(69P)
イギリス本土での大衆生活が豊かになり人々の生活が都市化すると、それまで大英帝国を支えていた海外進出と移住にも影響が出るようになってくる。ことに若者たちは、かなり好条件であっても、海外勤務を避ける傾向が明らかになったし、庶民の中にも海外移民を嫌がる人が多くなってきた。商船会社の船員も70パーセントが外国人になっていた。海外や会場での仕事への関心は、本国が豊かになるにしたがって、しだいに希薄になっていったわけで、これは成熟した文明が陥る普遍的な衰弱のパターンとして共通している。(70~71P)