2.01.2009

【キャリア】若者はなぜ3年で辞めるのか?(光文社新書)

「若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~(城繁幸著、光文社新書)」は2006年9月に出版された本だ。社会人2年目の私が手に取って、転職を考えることを後押ししてくれた本でもある。正直なところ、転職をしない方が、採用した企業にとっても良いし、働く自分にとってもやりがいのある職場であるわけなので、それに越したことはない。それを私は十分支持する上で、この本は若者の閉塞感を少しでも解き放してくれるものと考える。


(要旨)
人材採用に関する考え方は、1990年代の後半を境に変化した。以前は、年功序列制度を維持するために何でもそつなくこなせるタイプの人材を企業は求めていたが、企業の厳選採用化に変わるとともに、組織のコアとなれる能力と一定の専門性を持った人材を求めるようになった。
学生の姿勢には、二つのタイプがある。一つが、明確なキャリアプランを持ち、そのために努力し、厳選採用に対して正社員としての地位を獲得できるグループ。彼らは仕事に対して極めて高い意識をもつ。もう一つが、「ただなんとはなしに」有名企業ばかりに応募し続け、なかなか内定の取れないグループ。彼らは1990年代後半より前の学生と大して変わらない。前者の欠点は、就職までのプロセスにおいて、あまりにも「仕事に対する意識」が高くなりすぎる(わがままになる)ことである。この結果、入社後、希望していた業務と実際に割り振られた業務にギャップがあった場合、強烈なフラストレーションを抱え込むことになる。
年功序列制度の本質は、若い頃の頑張りに対する報酬を将来の出世で支払うことだ。その従来の年功序列制度は、大方の企業において半ば崩壊している。半数以上の人間は、若い頃の働きに見合った報酬を受け取れない、働き損に終わる。
日本の若者たちの間での公務員人気は絶大である。理由は、完全な詰込み型の学校教育システムにある。マークシート方式のセンター試験や私学の穴埋め問題は、「どんな問題も必ず正答が一つだけ存在する」という前提である。本来なら、あるか分からない答えを自分で考える、そして、そのための理論を構築する作業が重要である。それが、そのまま人生に対するスタンスに影響している。リスクの伴う結果の不透明な挑戦よりは、確実に答えのあるレースを選ぶ気風を知らず知らずのうちに育んでしまう。諸外国に比べて、日本の若者に起業家精神が低いのはこれが理由である。「与えられるものは何でもやれるが、特にやりたいことのない空っぽの人間」を量産できる日本型教育システムは、年功序列型的な考え方と相性がいい。
将来において、もはや高い給料と序列は保障されない。自分のレールの先にそれがなさそうだ、と感じるなら、自分で主体的に動き始める必要がある。上司に対し、自分の希望を伝え、望むキャリアに沿った業務を勝ち取る。社内公募やFA制度のような制度があるなら、それらを利用してキャリアを形成していく。それでも解決にはほど遠いなら、より理想とする企業への転職も検討する価値はあるだろう。